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うめぞー、思案中

明日は歴史作家「うめぞー、執筆の合間に思案中」

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この抜け殻はオニヤンマのヤゴ?……奈良国立博物館にて佐伯宿禰今毛人という人は、佐伯氏で唯一、参議・公卿の地位にまで上った人です。
確か東宮坊から造甲賀宮司に出向になって、平城還都の後には造東大寺司の次官になって五位に昇格し、そこからコンスタンスな出世街道にのぼったかのように思えるのですが、とんでもない……かなり上位者に振り回された官界生活を送った人です。

大和少掾(しょうじょう)を兼任のまま、造東大寺次官に就任したのは三十歳の頃ですから、天平勝宝四年の大仏開眼の年には三十四歳くらいになるはずです。
この後、摂津大夫を経て、またもや造東大寺司に戻って来た天平宝字七年には長官に任命されました。
それが45歳の時ですから、今も昔も一番仕事に載っていた年代でしょう。
ところがこの翌年、大宰府管内に左遷……
『続日本紀』にはストレートには書かれていないのですが、宝亀八年の藤原良継の薨伝を見てみますと、この時に良継、石上宅嗣大伴家持と伴に大師(藤原恵美押勝)の暗殺を謀った云々と見えていて、これを密告された揚句の流罪同然の左遷だったようです。

この後、政界のトップが替わると筑紫に滞在したまま、肥前守大宰大弐になって実力を発揮し、都に戻った神護景雲元年には、称徳女帝によって造西大寺司の長官に抜擢されました。
女帝崩御の後、光仁天皇の御代でも、正四位下にまで上って官界の上部にいたのですが、宝亀六年に何やら不可解の事件が起きています。
これが物議をかもしまくる第16次遣唐使の節刀大使への任命です。

最初は節刀を賜って宝亀七年の初夏に難波を出向し、肥前国松浦で風待ちに入ったようですが、数ヶ月たった秋になっても出向の機会に恵まれず、時季は冬となって大使は都に戻り節刀を返上してしまいます。
しかし副使以下は大宰府に留まって、更に時期を待っている状態です。
明けて宝亀八年、四月に再び遣唐大使として天皇に辞見したのですが、ここで病気と言い出して留まろうとし、揚句に輿に乗って難波まで行く羽目になり、それでもまだ病気だと訴えていたようです……
光仁天皇がここで諦めたかというと……あくまでも大使は佐伯今毛人だとして、副使の小野石根に大使代行を命じて、四つの船は出港して行きました。

意地でもこの人を唐に送り出したい陣営と、それを阻もうとする陣営が、裏というよりも上に存在していそうな気がするのですが、どうも良く分からない事件です。
次の動きは宝亀十年九月、筑紫で少し大人しくしていろと、またも大宰大弐に任命されます。
思うにこの頃、既に天皇から皇太子に実権は移っているようで、翌年の天応元年には正四位上に叙位されている事から考えても、先の遣唐使の騒ぎに裏には、絶対に山部皇太子が関わっていると見ても不思議ではありません。


皇太子――即位した桓武天皇は今毛人を評価していたようで、延暦元年には都に呼び戻して従三位左大弁兼大和守に任命し、造長岡宮使の一人にも抜擢し、その功労で参議にまで取り立てて正三位の位まで与えます。
しかし、掌を返したように、またもや大宰府に下れと命じられるのは延暦五年の四月です。
それまで多々兼任していた役職は、参議以外は全て解任されて、大宰帥としての赴任です。
この前年の九月に起きた、中納言暗殺に続く皇太子更迭事件との関わりを誰もが思うところです。

三年後の延暦八年正月、七十一歳になった今毛人は、これを時期と骸骨を乞い官界を去り、九年の十月に七十二歳で生涯を閉じる事となります。
考えてみると、大仏造営から始まって、様々な造営事業に関わり、有能な実務屋だったために、生涯にわたって天皇の考えに翻弄され続けた人だったのかもしれません。
 
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